9月15日(火)続き

●鉄のカーテンの向こう側、メディア専用エリアへ

練習が終わるや否や、私たちは待ち合わせの場所にとんで行った。
待ち合わせ場所とは、リンクサイドからロッカー・ルームに通じる出入口。そこにはドアがなく、通路にカーテンがかかっているだけだ。選手待ちのファンの一部は、ここにたむろしている。中から出てきたプレーヤーをいちはやくキャッチしようという子たちだ。だが、リンクのすぐ横なのでかなり寒い。
昨日は時々ここに来て、中の様子を見ていた。わずかに開いたカーテンの隙間からは、その向こうに外部への出入口があり、片方のドアが開けられていて、選手やメディア関係者が外にいるのが見えた。ほんの数メートル先なのに、入れないくやしさ。安っぽいビニールのカーテンが鉄のカーテンのように感じられた。その向こうには、なんだかワクワクする世界が待っているような・・・。飛行機に乗ってエコノミー席に座る時、前方のカーテンの向こうにはとってもいいことがあるように思えるのと似ている。ちなみに筆者は、招待取材のときに2回、エグゼクティブ・クラスに乗ったことがある。しかもそのうち1回はアッパーデッキだった。こんなこと、自慢してどうする・・・。

鉄のカーテンの前には、例の男性がもう待っていた。彼はエディさんという。
「あっ、来ましたね。じゃあ、行きましょう」と、いとも簡単にカーテンの中へ。う、うわあ〜、どうしよう〜っ、自分の鼓動が聞こえるくらい心臓がドキドキしてきた。なんだか禁断の世界へ足を踏み入れるようだ。

数メートル先のドアから外へ出ると、そこは建物の裏側で、後ろがグランド、左右を駐車用通路とトレーニングジムの建物に囲まれ、うまい具合いに隔離されたような一画になっている。出入口の横に大きなテントが立てられており、そこが取材陣の控え場所になっているようだ。でも、お天気がいいから、みんな外に出てウロウロしている。
見回してみると、あーっいたいた!! いや、選手ではない。テレビでお馴染みのスポーツキャスターたちだ。この人たちに会えることだって、私にとってはスゴイことなのである。

選手たちは、練習後、まず建物内のロッカー・ルームでシャワーを浴び、着替えをする。それからこのエリアを通ってトレーニング・ルームへ行き、各自、筋力トレーニングをするのだそうだ。その後は、再びこの場所を通ってロッカー・ルームに戻る。つまりチャンスは2回あるわけだ。
報道関係者もここで選手やコーチ陣をつかまえて、インタビューをしているのである。いつも、ウィスラー・キャンプからのインタビュー中継は、バックに山が見えているので、いったいどこで撮影しているのだろう?と思っていたのだが、今、私が立っているこの場所からだったのである。

メディア専用エリアでインタビューを受けているモギルニー(左・水色のシャツの後ろ姿)と
アシスタント・コーチのグレン・ハンロン(中央)。後方の階段上がトレーニング・ルーム

筋力トレーニングの時間は選手によってまちまちなので、早く切り上げてしまう人もいれば、じっくりやっている人もいる、とのこと。今日「練習」組だったホワイト・チームの選手の中には、既に帰ってしまった人もいるようだ。
Kちゃんがお目当てのマティアス・オーランドは、エディさん情報によると、その日、フライ&フィッシングに出かけたらしい。希望者には、そういうアクティビティも用意され、ちゃんと業者が待機している。

もう一つ得られた情報は、選手はけっこう自分の車で来ている、とのこと。昨年までは、まずバンクーバーからは原則として全員バス、そしてヴィレッジのホテルからはシャトルバスだった。
それが今年は、マイカー使用が許可されたらしいのだ。最終日の19日は、午前中で練習終了後、ただちにバンクーバーに戻って、夕方にはゲーム先であるフェニックスに旅立つというハードなスケジュールのせいかもしれない。
この規制緩和のため、バンクーバーに住んでいる選手は、ほとんど自分の車か、2〜3人で一緒に乗ってきており、バスで来たのはシラキュースなどマイナーリーグから参加している若い選手たちらしい。

ここで選手を待ちながら、エディさんとおしゃべり。キャンプに来ることになったいきさつなどを話すと、ここでは2人とも日本から来たことにしておいてね、とエディさん。そうではないとこの「特別扱い」は許されないことなのだろう。そりゃあそうだ。バンクーバー在住だったら、サインをもらえるチャンスはゴロゴロ転がっているんだもの。
そういうわけで、私はウソをつきました。選手のみなさん、ごめんなさい。でも、元々は本当に日本から渡って来たのだし、Kちゃんは正真正銘、このキャンプのためだけにはるばる日本から来たのです。

エディさんは何故このように、初めて会った私たちを優遇してくれたのかな?とずっと考えていたが、話しているうちにわかってきた。彼は日本が大好きで、出張でよく日本に行くし(特に山形県)、お寿司やお刺身も大好きなのだという。だから、昨日のVTVを見て、日本からわざわざ来たファンがいると知って、サポートしてあげたくなったのだろう。
確かに、バンクーバーからとか、ウィスラーに住んでいて見にくる日本人ファンはいるが、このためだけに日本からというのは私もまだ聞いたことがない。もしかしたら、Kちゃんが史上初かもしれない。

エディさんは「知ってる選手が来たら、日本から来たって紹介してあげるから、サインを頼めますよ」と言ってくれた。なんていい人なんだ!! 彼はまったく下心などはなく、純粋に私たちを喜ばせようとしてくれたのだった。
今さらながら、昨日のVTVに感謝。。。 それにしても、このような展開になるなんて…。きっと私が過去にした良いことを神様が見ていて、ご褒美をくださったに違いない。でも、どんな良いことをしたか、さっぱり思い出せないんだけど・・・。

●出てくる出てくる、選手たち!!

このあとに起こったことは、今、思い出してみても、夢のようである。

エディさんの横でおどおど待っていた私たちの前に、最初にさわやかに登場したのは、なんとスカッチーだった! すかさず話しかけて、紹介してくれるエディさん。
「そうなの? 日本から来たんだ。去年、日本に行ったよ」と笑顔で話してくれるスカッチー。選手が話しかけてくれるなんて!! これは現実なんだろうか!? 
スカッチーは、ちゃんと私たちの目を見て話してくれるので、とても好感がもてる。震える手で差し出したジャージに、彼は快くサインをしてくれ、「じゃあね」と言って去っていったのだった。
もう、言葉が出ない私たち。これでキャンプが終わってしまっても悔いはないかもしれない。おっと、Kちゃんはオーランドのサインをもらわないといけないんだった。

次に現われたのは、マーカス・ナスランド。彼は割と地味な存在なのだが、才能あるプレーヤーだ。エディさん、また例のように紹介。ナスランドもにこにこして、話しかけてくれる。「そう、去年のオープニング・ゲームは見に来たの?」「はい」と声をそろえる私たち。ズキンと痛む私の胸。「えーっと、ヨ・ヨ・ギだっけ」 彼はちゃんと会場の名前を覚えていたのだ。
ナスランドはスウェーデン出身。北欧系らしく、色白で金髪。それがクールな印象を与えるのだが、今、すぐそばにいる彼から発散される雰囲気は、あたたかくてフレンドリーそのもの。私はすっかりファンになってしまった。彼はカナックスで既に2フルシーズンを過ごしているが、今まであまり注目してこなかったことが悔やまれる。
ジャージにサインをしてくれる間も終始にこにこしていて、とてもナイスだった。

そうこうしているうちに、選手がたくさん出てきているのに気がついた。本当にここは天国のような所だ。
トレーニング・ルームの下にいるのは、なんとアレクサンダー・モギルニーではないか!! 再び心臓が激しく脈打ち出す。彼にもサインをもらえるのだろうか? なんだかおそれ多い。でも欲しい。ブレと同じロシアンだから、なんとなく気難しいのではないか、という気もする。
モギルニーは周りの人たちと談笑しながら、サッカーボールで遊んでいる。一人でボールを蹴り続けたり、壁に向かってキックしたりしているのだが、妙にうまい。やっぱり運動神経が発達している人って、何をやらせてもうまいんだなあ、と感心。でも、モギルニーって案外、足が短いのだ。いつもユニフォーム姿からは、幼児体型っぽいなあと思っていたのだが、それはこのせいだった。
モギルニーに限らず、ホッケー選手はあんまりプロポーションがよくない。ほとんどの選手が O 脚だ。がっかりさせて申し訳ないが、ブレもすごい O 脚である。リンデンもそうだった。小さい頃からスケートをやっていると、どうしてもそうなってしまうらしい。
モギルニーがこちらへ近づいてくる。TVのインタビューを終えたところを、エディさんがつかまえてくれた。特に話しかけてはこないが、にこやかにサインをしてくれる。どわ〜〜〜、かんげき〜〜〜!! モギルニーにサインをもらえるとは、夢にも思っていなかった。しかも予想に反して、とてもあたたかい雰囲気の人だった。な、なんだか私、すごく幸せ〜。

To be continued...

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