9月17日(木)

●練習試合で大乱闘!?

言うまでもないことだが、私たちはウィスラーにカナックスのキャンプを見に来ている。ということは、いくらAHLやWHLのプロスペクツ(Prospects:将来有望な新人たち)がたくさん参加しているからといっても、基本的には1つのチームだ。だから、試合中にファイトはないと思っていたら、起こったんである、大乱闘が・・・。

今日はレッド対ホワイトのゲーム。最初から、妙に小競り合いが目についた。もちろん、ボディ・チェッキングはかなりあるが、それ以上なのである。見ているうちに、それがある特定の選手に集中していることに気がついた。
その選手とは、レッドチームのNo.39ブラッド・フェレンス。プロスペクツの一人で、19歳のディフェンスマンだ。身長は192cmあるが、ひょろっとしていてそんなにタフガイにも見えない。が、彼が出てくると、俄然ボディ・チェッキングが多くなり、しかも執拗である。

ついに小競り合いが小乱闘に発展したのは、第3ピリオド。私たちの席から見て右手のコーナーに、選手がどっと一かたまりになり、一触即発の雰囲気。中央にいるのは、もちろんフェレンスだ。観客は、唖然とする人8割、喜んでいる人2割。

ジャッジが中に入って、この小乱闘は鎮圧された。
が、驚いたのはその後である。レッドとホワイト、それぞれの選手が一度ベンチに引き上げてきた。私たちの目の前はホワイトチームのベンチ。レッドチームは、その前を通って、自分たちのベンチに行かなければならない。
するとさっきのフェレンス、ホワイトのベンチの前を通る時、中の選手に向かって“F○○○ YOU !! ”と吐き捨てるように言いながら、去っていったのだ!! もう、私、仰天! 目が点!!

おいおいフェレンス君!! ちょっと信じられないなあ。ベンチの中の選手たちは、ほとんど君の先輩なんだよ。日本の体育会じゃあ考えられないよ、まったく。ま、ここは体育会じゃないけど、やっぱりそんなこと言っちゃあ、まずいだろう? 君がカナックスにあがってきたら、みんなチームの先輩になるんだぜぃ。

もちろん、このままで済まされるはずがない。目の前のベンチからは、選手たちの怒りの湯気が立ちのぼっているのが見えるようである。

ゲームが再開されてまもなく、やっぱり起こった大乱闘。今度は左側のレッドチーム・ベンチ前だ。中心はもちろんフェレンス。

しばらくすると、フェレンスと、ファイトの大御所、No.7ジェイミー・ハスクロフトの一騎討ちとなった。グローブを投げ捨て、ジャージをつかみ合い、レギュラーシーズン・ゲームさながらに取っ組み合う2人。遠巻きに見守るチームメイトたち。
ホワイトチームのベンチには、ブルーチームにいるもう一人のファイター、ドナルド・ブラッシャーが見学(!?)に来ている。

やがて2人はレフェリーに引き離される。赤のNo.39がフェレンス、右奥の白いジャージがハスクロフト。ご覧の通り、殴り合いの結果、2人ともヘルメットが脱げてしまっている。

結局、ゲームは9-1でホワイトチームの圧勝。ホワイト、相変わらず強し。彼等は昨日もブルーチームに大差で勝っている。
ここでホワイトチームは記念撮影。なぜか、パックを入れる黄色いケースを、頭上にかかげるブラッド・メイ。スタンレーカップのつもりなのか? みんな満面勝利の笑みである。レギュラーシーズンもこうだったらいいのに。

練習後に珍しい光景を見た。建物の裏に行ってみると、ちょうどベテラン・ディフェンスマンのデイナ・マーズィン、ブレット・ヘディカン、エイドリアン・オーコインがフライ・フィッシング出かけるところだった。彼らはカナックスでは長い選手。これまではウィスラー内で一緒にいるところを見たことはなかったが、ちゃんとこうやってディフェンスマン同士の友情(?)も温めあっているのである。なんだかうれしくなって、思わず「行ってらっしゃ〜い!」と手を振ってしまった。

さて、翌日の新聞によると、フェレンス君はこの日、練習の後に、ブライアン・バークとマイク・キーナンに個室に呼ばれ、とくとくと諭されたらしい。いわく「君はもっと忍耐強くならなければいけない。プレーオフに出た時のことを考えてみなさい。今よりも、もっともっと我慢強さが必要になるんだよ」これが効いたのか、フェレンスは翌日から一度もファイトをしなかったのだった。
(その後もマイナーリーグやジュニア・チャンピオンシップで活躍していたフェレンスだったが、1月のパベル・ブレのトレードで、ともにフロリダに行ってしまった。)

●ゴールキーパーの孤独

キャンプに来る前からずーっと話題になっていたのが、今年の第1ゴーリーが誰になるか、である。ガース・スノウはまだその能力が発揮されていない感じで、今だ未知数だし、コーリー・ハーシュは昨シーズン、シラキュースと行ったり来たりでこれまた不安定。キャンプでも一番の課題は、フォワードでもディフェンスでもなく、ゴールキーパーだった。

数日間、ここにいて気付いたのだが、スノウとハーシュとシラキュースから来た若いゴーリーたちが一緒にいるのを見たことがない。お互い避けているかのように、ヴィレッジ内をぶらついている時間も違う。笑っているのもあまり見たことがない。
今でこそスノウとハーシュはお互い称え合って、うまくやっているけれど、この時はなんだかピーンと張りつめたものがあり、見ているこっちの胃が痛くなってくるようだった。もしも私がホッケー選手になっても、ゴーリーには絶対なりたくないと思った。そう思っている人は多いらしい。

●愛妻家?キーナン

その日の夕方、ヴィレッジをぶらぶらしていると、おお、前からキーナンが来るではないか! ジーンズのジャケットに黒いポロシャツで、なかなか若い格好をしている。彼は何かを探している様子で、メインストリートを抜け、ずーっと向こうまで歩いていった。
夜になって分かったのだが、この時、キーナンは奥さんと食事をするレストランを探していたらしいのだ。奥さんとはまだ新婚だそうだが(キーナンは再婚)、落ち着いた雰囲気のカップルである。キーナンはヴィレッジのはずれにある静かなレストランに目をつけ、予約しておいたらしい。アイアン・キーナンの優しく人間的な(!)一面を見たような気がして、少しほっとしたりした夜であった。

ウィスラーの夜はロマンチックである。仕事を終えた報道関係者も、奥さんかガールフレンドと肩を組んで歩いたりしている。冬のスキーもいいけれど、夏はもっとおすすめだ。

ちなみに選手たちは、この夜、大挙してモンゴリアン・グリル(鉄板焼風のレストラン)におしかけている。こちらは色気より食い気であった。

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