9月18日(金)続き

●ランチBBQとショッピングの昼下がり

今日の選手たちのランチタイムは、ハードロック・カフェでBBQ(バーベキュー)である。以前は、最後の夜に、有料でファンも参加できる“BBQの夕べ”が、ウィスラー・マウンテンの中腹にあるレストランで行なわれていた。それを期待して行ったが、今年はランチに変わり、しかもオープンではなく、リンクでの抽選で当たった数名のファンが参加できるのみ。これはオツさんが選手から仕入れた情報である。
どうも経営がオルカベイに変わってから、ファンサービスが悪くなったような気がする。

2時間ほどでランチは終わり、選手たちがぞろぞろハードロック・カフェから出てきた。下はその写真である。この時に限らず、ヴィレッジでは必ず誰かにどこかで会えるという夢のような状態がずっと続いていた。本当に天国のような所だった。それも明日で終わり。ちょっと寂しい気持ちになってくる。

さて、この後は自由時間らしい。選手たちはけっこう買い物に出歩いている。若い選手はともかく、もう顔が知られている中堅以上の選手は、バンクーバーのダウンタウンでは、なかなか買い物もできないだろう。
まずROOTSに入っていくメシエを発見。彼はブーツを買っていた。そして、店内にあったゲストブックにサインを残していったのである! 後でそのページを開き、しみじみ眺めてきた私たちだった。
その後、スターバックスでお茶していたら、一人で歩いて来るヘディカンを見かける。彼はエディ・バウアーで何か洋服を買ったらしい。あとは、CD屋でスカッチーとオーランドを見たとか、オツさんたちと情報交換。
私たちはスポーツショップへ買い物に。そこには「CANUCKS TRAINING CAMP '98」とプリントされたTシャツ、トレーナー、キャップが売られているのだ。私は記念に紺のTシャツを、Kちゃんはキャップを買った。

このお店には、チーム・カナダがワールドカップの前に合宿した時の写真が飾ってある。グレツキー、リンドロス、サキックなどの錚々たるメンバー。練習リンクだったMeadow Park のロビーにも、チームの記念写真やスナップ写真がケースに入って飾られていた。ファンは必見である。

●夜、酔気居屋で遭遇した“あること”とは・・・

夜はまたトムさんの酔気居屋に行った。早めの時間に行ったので、店内はまだすいている。カウンター近くのテーブルに座り、トムさんとおしゃべりしながら飲み始めてまもなく、一人の男性が本を片手にフラッと入ってきて、カウンターに座った。何気なくその人の顔を見て、おおっ!! 一瞬、私は動きが止まってしまった。心臓も止まるかと思った。なんとカナックスのアシスタント・コーチ、グレン・ハンロンではないか! あたりを見回すが誰もいない。完全に一人である。どちらかというと、一人になりたくてここに来た、という感じ。そう、ここはメインストリートに面していなくて静かだし、通りを歩いているカナックスの関係者に見られる心配がないのである。

ハンロンはお寿司を注文すると、あとは本を開いて読み始めた。
私はトムさんを呼んで、彼がカナックスのアシスタント・コーチであることを話す。トムさんは「よお〜し、僕がきっかけをつくってあげる」とばかりに、ハンロンに話しかけ始める。「ビジネスで来られたんですか?」「何日くらいご滞在で?」
ポツポツと最小限の受け答えをするハンロン。
今度はトムさん、「今ウィスラーで、ホッケーチームがキャンプをしているんですが、ここにいる彼女たちは、それを見にわざわざ日本から来たんですよ」だって。これにはハンロン、少し微笑んで反応したものの、相変わらず自分の素性は明かさない。どうやら心底、一人になりたいようである。

考えてみると、ハンロンはNHLの現役時代はゴールキーパーで、カナックスのアシスタント・コーチになる前は、ゴールテンディング・コーチという肩書きだった。つまり、ゴーリーたち同様、今回のキャンプでは、彼へのプレッシャーも相当強いに違いないのである。プライベートな時間くらいは、一人になりたいのも無理はない。
またトムさんを呼んで「そっとしておいてあげましょう」と話す。ちょっと残念そうなトムさん。でも私たちも、ハンロンの大切な時間をジャマしたくない。
それにしても、アシスタント・コーチも孤独である。企業で言うなら中間管理職。キーナンと選手たちの間に入り、やりきれないことも多いに違いない。

さて、ハンロンが席をたった後、ふと見ると本が置き忘れてある。あわてて、それをつかみ彼を追いかける。彼もすぐに気付いて振り返り、私から本を受け取ると、初めてニコッと笑った。それはゴルフの本だった。ホッケーの本ではないところに、彼の厳しい状況がより感じられた。

彼が去ってまもなく、今度はトムさんの友達が2人やってきた。カナディアンのにーちゃんである。トムさんがまた同じように私たちを紹介すると「カナックスは今そこで、なんかパーティーをやってるよ」「えーーーっっっ、どこですかっ?」「そこだよ、そこ」
そこってどこ?と思いながら、とりあえず外に出て、彼らが指差した方向に行ってみる。ここはメインストリートから見ると建物の裏側で、車が入れるループがあり、周囲にはきれいな植え込みがあって、裏庭のようになっている。ウィスラーヴィレッジにはこういうところが多い。ループをまわっていくとホテルがあり、そこの1階のバーがやけにザワザワしている。どうやら「そこ」とはここらしい。キャンプの打ち上げパーティーをやっているようだ。すると何人かの若い選手たちが、かたまって出ていった。その後も、ぱらぱら帰り始める人が・・・。もうそろそろお開きの時間のようである。
そうか、ハンロンはここから酔気居屋に来たんだ。パーティーの最初だけ顔を出して、あとはそっと抜けて来たに違いない。酔気居屋は、パーティー会場のホテルから、宿であるデルタ・ホテルに向かう道とは反対側のループの奥にあるから、近くても誰もこっちには来ないというわけだ。

その後、選手たちは一度デルタ・ホテルに戻り、それから三々五々、夜のヴィレッジに繰り出していった。
こうしてキャンプ最後の夜はふけていったのである。

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