もうひとつの京都・京北での林業体験

紅葉の時期に清水寺の人だかりを経験したことがある人ならば、京都にこれ以上Hidden Beauty・隠れた魅力が残っているのか想像もつかないかもしれません。しかし、京都の中心からスリルいっぱいの山道を北へ一時間、その京北(けいほく)地域では、まず海外の観光客に会うことはありません。日々の生活は季節に彩られ、私の宿泊先である徳平庵のような茅葺きの農家が、木々の丘の間にところどころ見られます。

数週間旅館とホテルの連続だった後に、民家に滞在できてとてもほっとしています。住人と、あと犬と一緒に過ごします。

ほとんどのゲストは一階の畳の部屋で寝るかもしれませんが、私はこの屋根の垂木の下で寝てみたかったです。

家のオーナーである植田家はここに6代住んでいます。

自然豊かな田舎の環境でありつつも、京北は京都の都市部と密接なつながりを持っています。歴史的にも何世紀にもわたり、木材を寺社仏閣に供給してきたからです。本日、私は現地の木こりチームに参加させてもらう貴重な機会を頂きました。

井口さんとそのチームによって切り開かれた、未舗装の道を車で進んでいきます。

そして丸太の上を這い上がりました。丸太の上でバランスを取りながら写真を撮るのは至難の技。ホントですよ!

京北で切り落とされた木材は、雪の降る山あいから木ん馬(きんば)というソリで運び出され、川を筏で下り、京都の嵐山にまでかつては運ばれました。現在では機械が発達してだいぶ作業が速くなったとはいえ、それでも骨の折れる仕事です。全国で見ても、若者が林業に従事するのは少なくなってる中で、京北は林業がまだしっかりと残っている貴重な地域です。

グラップラーは、丸太をつかんで移動させるのに使われます。ゲームセンターでのUFOキャッチャーに少し似てます。この大きさ以外は…

プロセッサーはさらに便利で、枝を切り落としたり、丸太を切断することができます。たった2400万円であなたのものに…

しかしながら、すべての仕事はギャンブルである、とも言えます。木は切り倒してみるまで実際の値がいくらつくのかはわからないからです。月に3度行われる木材の競り市には、この京北地域の木材の評判のため、全国から買取業者がやってきます。

京都の主要なお寺のひとつ、知恩院の最近の修復事業に木材を供給したのも井口木材です。

木こりさんの技能を学ぶには10年かかりますが、今日、なんと私もチェーソーを使ったお試しコースをやってみました。

私は全然木こり向きの人材ではないと思うのですが…

しかし私のホストの植田さんは、木材を機械を使わず切って育ったので、すごく楽しんでいました!でも植田さんにチェーンソーを持たせてその辺をふらふらさせてはいけませんよ…

木こりの現場を訪れた後には、井口さんと奥さんが運営するローズカフェに行って、箸作り体験をしました。もちろん、地元の木材を使ってです。

木を削るのは、伊勢でやった乾燥したかつおを削るのとあまり変わりませんでした!

木のおがくずを昼食にいかが?!匂いは実際いいんですけど…

たくさんこうして働いた後は、京蕪庵(きょうぶあん)での昼食の時間です。この田園レストランでは手打ちのそばや地元の食材を楽しめるのですが、私たちはシェフの田尻さんにお任せしました。すると、そばからかぶら鍋から地鶏から鯖寿司まで、あらゆる地元の特産を出してくれました。しかしすべてを完食しました。というのは9割ほどは健康な野菜だったためどんどん食べられたのです(というのは私の食べ過ぎの言い訳!?)

そば畑を眺めながら、外のテラスでご飯を頂きます。

この写真を撮った段階でも、まだ全体の半分ほどしか来ていません…

京北では、餅の中に納豆が入った納豆餅が新年にお雑煮の代わりに食べられます。日本でここまで納豆が人気になったのは京北のおかげでしょうかね…

本日の最後の目的地は常照皇寺(じょうしょうこうじ)でした。14世紀、南北朝時代の政争のなか退位した光厳(こうごん)天皇のために建てられた禅寺で、美しい森林に囲まれています。

皇室のシンボルである、菊の御紋を見つけられますか?

奥の間に光厳天皇が鎮座されていて、地元の人は今日になっても様々なお供えを捧げます。

宮廷での権力争いに幻滅し、退位後をここで暮らしました。そして遺言には、この寺を訪問客を引き付ける流行り寺にせずに、その静けさを保つように、と書かれました。その願いは尊重されているようで、私たちが訪れた時も、他には誰もいませんでした。

紅葉が始まりつつあります。

こののんびりしたお寺での、参拝料は「300円から500円」とのこと。

一日を京北の素晴らしい景色の山や谷で過ごし、なぜ天皇たちがここをHidden Beauty・隠れた魅力とみなしたのがよくわかりました。

私もここで喜んで老後を過ごせますよ!

明日は、日本海岸に向かい化石探しです!

翻訳:We Love Japan Tour 事務局・中山慶